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私には3つ年上の彼氏がいます。
木の葉が色付く頃、久し振りに会った彼に、なかなか会えないね、と口にした私を彼は笑った。
そんなに一生懸命、会いたいと思ってないよね?
彼の言葉に、私は何も言い返せなかった。








携帯の着信履歴を逆登りながら、メールの履歴を巻き戻しながら、思う。
最後に彼に会ったのはいつだろう。
声を聞いたのはいつだろう。

「そんなに会えないで、寂しくないの?」

年下の友達が、大きな目を、更に見開いて私を見る。
私はまた、何でもない風に、笑った。

「あんまりしょっちゅう会いたいと思わないんだよねぇ・・・。私も彼氏も仕事忙しいし・・・」

私の返答に、友達は納得しきれない表情で、ふぅん、と曖昧に頷いた。

「私は、寂しいな・・・毎日でも会いたいよ」

私も、寂しいよ。
でも、寂しいと言って、彼に連絡をとったら、敗けだ。

「お互いに面倒くさがりだからねぇ。一人でぼーっとしてる方が楽なんだよ」
「そうかなぁ・・・・」
「ウチは、そうなの」



いい聞かせるように、ゆっくりと発音した。
そんなはずはない。
そんなものは、見栄だ。

解っている。



携帯の着信履歴を逆登りながら、耐えきれなくなって、真夜中にメールをした。
返って来ないと言うことは、はじめから予測できた。
電話をかけても、留守番電話。
もう駄目かと諦めかけた、真夜中に、長野に居るとメールが届いた。

「スノボ行ってたんだ、昨日から。明日は遅くに帰るから会えない」

いつもの、飾り気のない文面で、何でもない風に、言う。
私は、本当ですか、と出かかった言葉を飲み込み、驚いたよ、と一言だけ返した。



白い湯気の充満するバスルームで、お湯に沈みながら、固く目を閉じる。
私はいつか殺される。
彼にこがれて、死んでしまう。
そんな私の亡骸を見て、彼は訳も解らず、むせび泣く。

「しくじった・・・・・何であんな奴の手なんか、取っちゃったんだろう」

ああ、でも。
泣いてくれるなら、本望か。

私の死体を見下ろして、なんでもない風に彼が目を閉じる。
そんな映像を思い浮かべ、私は鳥肌の立った両腕を抱いた。



彼は、私を好いているのか、その確証がない。
私は、彼を好いているのか、その自信がない。



長い間をかけて、風化していった感情は、ぼんやりと霞がかかっているようで、思い出すことすら困難だった。



「あのね、今度の土曜日なんだけど」

仕事帰り、道すがら彼に電話をかける。
いつものけだるい声は聞きづらく、私は必要以上に、大きな声になる。

「空けておいて、絶対。・・・・絶対」

力を込めて、念を押す。
彼は何か悟ったように、重い口調で、あぁ、とだけ言った。

今度の土曜日、タイムリミットを刻んだ私自身、まだ心が決まらないまま、電話を切った。
土曜日、その日までに答えは出るだろうか。
土曜日、私に会った時、もう彼の心は決まっているだろうか。
私は携帯を見下ろしながら、静かに息をついた。



携帯の着信履歴を逆登りながら、メールの履歴を巻き戻しながら、思う。

そういえば最後に、電話越しでなく、直接彼の声を聞いたのは、いつだろう。





<了>